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『アイの歌声を聴かせて』を観た(ネタバレ有)

ネタバレです。

『アイの歌声を聴かせて』

総合的には期待以上でした。上映時間は100分すこしで短いのかと思いましたが、中だるみも回収漏れもなくスッキリとした読(?)後感です。

ストーリー

これはどこかでみた感想の若干受け売りですが、「シンギュラリティ」という言葉を出すように AI が人間を超えるとか超えないとか、AI が暴走してとか、そういう話に行かなかったのが陳腐感につながらなくて奏功していると思います。

人のことを大切に思う気持ちは、不器用な発露であってもめぐりめぐって届くんだよ、というようなメッセージを受け取りました。"サトミ → トウマ”は部室を守る(けど言えない)、"トウマ → サトミ"はたまごっち AI に依頼(けど言えない)で、ひいてはシオンとして友達を結びつける。"シオン → サトミ"には、人間ではやらないようなやり方で、クラスメイトを巻き込みながら達成していく。

シオンの出自に関する伏線については分かりやすすぎて、「これ、だれがやった(改造した)の?」という比較的序盤のシーンで仕掛けがわかります。 回収シーンでは驚きとかスペクタクル感はなく「はい、知ってました」という空気になってしまいます。 2回目に観たときに転入の場面の見え方が変わるというからくりの提供としてはいいですね。

劇中でキャラクターが突然歌いだすことには慣れているのですが、本作はシオンが歌うことの意味付けが脚本内でなされているので納得感があります。

シオンはムーンプリンセスという劇中作品を強烈に覚えて、それを参考にした行動をしているわけですが、もう少し劇中劇の内容に言及があってもよかったのではないかと思います。尺の問題はもちろんありますが。(調べてみると監督の意図通りのようですね:

映像

サトミのキャラクターデザインがまず良いです。顔も良い。

序盤で印象に残ったのは音楽室の諸機器をクラックしてミュージカル始めちゃうところ。鍵盤の動きも曲に合っているし、ストリングスが駆け上がる場面でホワイトボードにストリングスの駆け上がりの楽譜が表示されるのは、こだわりを感じる映像です。

電飾が乱舞して歌うシーンはやはり観る人を魅了するような、レベルの高い映像美でした。 (シネスコで観たいかも)

歌いながら柔道をするという(絵作りが)難しそうなシーンがありましたが、ダイナミックな画角で、原画の枚数が多い感じでぬるぬると、違和感なく躍動感をもって描ききられていました。実際の試合にカットインするコンテは少々驚きがありましたが、テンポの良さに一役買っているようです。

何度も映された「AI 運転侵入禁止」 は"進入"でない理由があるんでしょうか。